【米津玄師による「他者理解」の表現】1stアルバム『diorama』をガチで全曲レビューしてみた。

2018年6月28日

2012年発売の米津玄師さんの1stアルバム『diorama』が発売6周年!

ということで、今回はこのアルバムに収録されている全曲をファン目線で紹介したいと思います!

初期楽曲はなかなか癖が強いのでBOOTLEGなどからファンになった方からすると「難しい…」となってしまうかもしれませんが、彼の才能を強く感じられるのは個人的にはこのアルバムだと思っていますので、ぜひ聴いてもらえたらなと思います。

Twitterでもお祝いツイートがたくさんTLに流れてきましたので、最初のアルバムなのにこんなに愛されているんだなぁと感慨深くなりました(CDジャケットのロールケーキを作っちゃうのはビビりました笑)。

各曲の歌詞解釈記事のリンクも貼ってありますので、ぜひチェックしてみてくださいね!

それでは『diorama』のレビューをどうぞ!


diorama [ 米津玄師 ]

dioramaを全曲レビューしてみる

dioramaという英単語は日本語でもカタカナで「ジオラマ」という言葉としてあるように、対象を立体的な模型にして表現する方法のことを指します。

このアルバムは、まさに1つ1つの楽曲が街というジオラマを形成しているがごとく、各楽曲では登場人物もストーリー設定も異なるものの、米津さんが伝えたいメッセージは一貫して「自分と他者は違う存在なので相入れるのは難しいが、互いに愛し愛されたい存在でもある」という哲学を示し続けています。

1曲ずつが単独で素晴らしいのはもちろんのこと、このアルバムコンセプトが「背骨」となって各曲で様々なアプローチから表現されることで、より一層米津玄師という人間の心の中に内在する想いを強く感じることができる作品へと昇華されているところが6年経った今でも「名盤」と言われ続ける理由なのかなと思われます。

それでは各楽曲のレビューをしていきましょう!

 

1.dioramaで繰り広げられるストーリーを束ねる『街』

アルバムのトップを飾るこの楽曲からもうすでに『diorama』の世界観がにじみ出ています。。

どこかラジオのような曇りがかったサウンドと気怠い歌い方に乗せられて発されるのは、米津さんの「人間社会」という「街=多くの人々」へのコミュニケーションの葛藤です。

米津さんの過去の高機能自閉症やうつ病といった対人コミュニケーションにおける挫折から、”音楽”という手段でその苦難をどう抜け出していくかについて歌った歌だとこのブログでは過去に解釈しました。

音はどこか懐かしさと退廃さを感じるサウンドで、ギターのディレイサウンドで音像が歪むところが米津さんの心の揺れ具合を絶妙に表しているのも見逃せませんね。

(街の歌詞解釈記事はこちらです。)

 

2.ハイテンション+ノイズがたまらない『ゴーゴー幽霊船』

今もライブでよく演奏される人気曲で、最近ファンになった方の中でもYouTubeの関連動画などでPVを見たことがある方が多いのではないでしょうか?

1,2,3,4から繰り出されるギターリフはもちろん、Aメロの癖になるノイズ音や狂ったチョーキング音と、カッチリとしたギターのブラッシングという両極端なものが織り交ぜられたサウンドが余計に曲の中毒性を増しています。

歌詞は一見意味が分からない言葉の羅列のように見えますが、この曲は前に書いた歌詞解釈記事の中身を要約すると「アーティストとしての生き方・価値観」についての米津さんの想いが表現されているといった内容になっています。

ゴーゴー幽霊船の歌詞解釈記事はこちらで、PVは以下から見ることができます。

絵も映像も全部米津さん本人が制作しているのですが、この髪の毛一本一本に至るまでの細かさに脱帽ですね…。

 

3.ありふれた音楽シーンへの反逆を表した『駄菓子屋商売』

ライブでも定番の1曲となっていて、米津オフ会を開くとカラオケで歌われる確率の高いこの楽曲。

「パラパッパラパッパッパ」「イェーイ」「チューチュー」など誰でも乗れる歌詞がたくさんあるので全員で盛り上がれるのが人気の秘密です。

歌詞では甘ったるい愛ばかりを歌った売れ線の曲ばかり溢れている音楽シーンを「駄菓子屋商売」と比喩し、それに対する反骨精神を表明している点が強烈な楽曲となっています。

ライブに行くなら、その前にぜひ1度聴いてみてください!

(駄菓子屋商売の歌詞解釈記事はこちらです。)

 

4.難解な語彙と軽快なテンポが癖になる『caribou』

マーチのような軽快な曲調にものすごい言葉数且つ難解な歌詞がねじ込まれたこの楽曲。

この楽曲の肝は何と言っても哲学的な歌詞です。

「甲乙齟齬」やら「証明と論法」やら難しい歌詞ではありますが、「自分と相手の価値観の違いをどう受け入れるべきなのか」についてがメイントピックなので、これに紐付いて曲を理解するとその奥深さに魅了されること間違いなしです。

caribouはおそらく楽曲の元ネタとされているであろう米津さん作画の絵本も米津さんのサイトから見ることができるので、こちらを見てから歌詞を見ると理解できる部分が増えます。

(caribouの歌詞解釈記事はこちらです。)

 

5.暗雲立ち込めるダンサブルなギターロック『あめふり婦人』

雨が降っているかのような怪しげなギターリフのメロディから始まり、Aメロからサビまで独特の不穏感でついついリピートしてしまう楽曲がこの『あめふり婦人』。

Aメロの途中などでもブレイクでドラムのバチだけで「タッタッタタン タッタッタタン」と入っているのが曲の怪しさをさらに増しています。

サビで裏声を多用しているところも他の曲には無い魅力ですね!

歌詞に関してですが、「雨」がモチーフになっているところから、この曲は「天気」と「恋愛」を重ねて考えると歌詞の意味が分かる楽曲となっています。

果たしてあめふり婦人の恋の行方は…。続きは実際に聴いてみてください!

(あめふり婦人の歌詞解釈記事はこちらです。)

 

6.マジョリティーの価値観に物申す『ディスコバルーン』

先ほどの『あめふり婦人』に引き続き、こちらもかなり怪しげなギターリフを中心としたダンスロックとなっています。

そしていきなり「嫌いだ」という言葉が連射される危なさから、この曲の世界観に一気に引き込まれてしまいます。

個人的にサビの入りの歌詞になっていない歌部分がめちゃめちゃ頭に残るんですよね…。中毒性が非常に高いので要注意です。

この曲も先ほどの『駄菓子屋商売』と同じように「世間と自分の音楽的価値観の相違」について歌詞で表現されています。

なぜディスコなのか?途中で出てくる地球儀は何を意味しているのか?

気になった方はぜひ歌詞解釈の記事も読んでみてください!

(ディスコバルーンの歌詞解釈記事はこちらです。)

 

7.優しい歌声と不協和音が織り成す独特な世界観『vivi』

言わずもがな有名なdioramaの名曲『vivi』ですね。

この曲は米津さんの当時の内面世界に1番近い曲だと本人が公言するほどの楽曲で、他者とのコミュニケーションの難しさについて童話風なストーリー仕立てにしつつ表現しています。

「街を抜け出す」という歌詞にあるように、この曲もアルバム名の「diorama」という世界観の表現に繋がっているんですよね。

サウンド的には、不協和音のように聞こえるギターアルペジオと米津さんの強みである低くも優しいボーカルで、この楽曲の暗さと切なさを表現しています。

viviの歌詞解釈記事では非常に解釈が難しい歌詞もじっくり分析してありますので、この曲の意味をしっかりと理解してみたいという方はぜひご覧ください。

ちなみにPVはこちらです。

 

8.好きな人への”行き過ぎた愛”を描写する『トイパトリオット』

自分の好きな人に対する少し行き過ぎた愛情を表したストーリー調のミドルロックな楽曲です。

可愛い歌詞の世界観に反して「あなたの敵は全員殺してしまおう」というある種の真反対な残虐性が同じ曲に同居しているという悲しさも含まれた曲になっているのが注目ポイント。

パトリオットは「愛国主義」という意味で、そこにトイと付いているので「小さな愛国主義者」という意味になる造語なので、その辺りを念頭に置きながら聞くと、この曲の本質に気づくことができると思います。

(トイパトリオットの歌詞解釈記事はこちらです。)

 

9.ハイテンション+ノイズがたまらない『恋と病熱』

誰もが一度は経験するであろう「他人とのコミュニケーションの難しさ」が切ない歌詞と叙情的なメロディに乗せられて歌われているのが特徴的なバラードロックです。

曲の最後は、消えかかってしまう主人公の声がラジオボイスで途切れ途切れになってしまうというギミックを加えた演出にもなっていて、心の締め付けられ具合に拍車をかけます。

南方研究所の制作したハイクオリティなアニメーションPVを聞きながら楽曲を聞くと涙腺が自然と緩むという人も続出なこの楽曲は昔からのファンに大人気です。

Cメロの「誰も嫌いたくないから〜」の部分は誰もが「自分も本音はこういう感情を人に対して持っていたことあったよなぁ…」としみじみ感じること請け合いです。

(恋と病熱の歌詞解釈記事はこちらです。)

10.真っ黒い感情が不穏な音楽に包まれる『Black Sheep』

『diorama』の中で1番静かで1番心の闇を感じるのがこの楽曲でしょう。

イントロのアルペジオと米津さんの少し上ずった歌い方が癖になる一曲です。

Black Sheepは「厄介者」という意味で、「他人から見た時に自分という存在は厄介者である」という米津さんの考えがアルバムで最も暗い楽曲に込められています。

歌詞カード通りに歌われない部分があったり、歌詞カードにサビの歌詞が載ってなかったりというところにも狂気を感じられるので、米津さんの才能の根源にある「心の闇」に触れたい方はぜひどうぞ。

(Black Sheepの歌詞解釈記事はこちらです。)

 

11.どこか懐かしい切ない2人の物語『乾涸びたバス一つ』

静かなアコギのコードストロークから始まるAメロからすでに切なさとノスタルジックさでいっぱいな名バラード曲。

少し古ぼけたバスに揺られる少女と、その少女が経験した男女の駆け落ちストーリーを描きながら「大切な人を想う心」と「もうその人と会えない儚さ」を同時に表現しているところがグッとくるポイントですね。

実は先ほど紹介した「恋と病熱」の歌詞ともリンクしている部分があるので、この世界観の繋がりを感じて解釈するのもオススメします。

前にこの曲の歌詞を解釈した時には「実は米津さんは裏メッセージとしてこれも込めているのではないだろうか?」という考察をしたので、そちらも気になる人はぜひ読んでみてくださいね。

(乾涸びたバス一つの歌詞解釈記事はこちらです。)

 

12.醜い自分を受け入れてくれる愛を探す『首なし閑古鳥』

この曲は平和な曲調とは裏腹に、米津さんの「自分自身の醜さ・他者との価値観の相違」に対する悩みとそれを受け入れてくれる愛への渇望を「首がない閑古鳥」に重ねて歌詞にしている楽曲です。

ギターリフのどこか笛囃子的なメロディ性やメロディ全体を通してのドラムのリズム感の楽しさは、どこか「周りに合わそうとして無理して空回りしている人の気持ち」を表現しているようにも聞こえるというところが個人的には好きなところです。

この曲は米津さんの過去を知っている人ほど「あぁ、なるほどね」としっくり来る曲でもありますし、今この時点で「いじめ」や「孤立」を感じている人にもダイレクトにグッとくるのではないかなぁと思います。

言わずもがな、サビのメロディの中毒性は他の曲同様なので聞いたらすぐに口ずさみたくなってしまうのは必至でしょう。

(首なし閑古鳥の歌詞解釈記事はこちらです。)

 

13.遠いあなたの心をアナログテレビに映し出す『心像放映』

タイトルの通り、見えない相手の心を電波に乗せて自分に見える形で映し出してほしいというコミュニケーション願望を込めた浮遊感のあるゆっくりしつつノイズ音などに溢れた不思議な一曲。

『ゴーゴー幽霊船』などとは違うゆったり目なスピードの曲でありながら、Aメロの中毒性はとてつもないものがあり、頭の中がそれこそ電波ジャックされてるんじゃないかというほどに曲を聴き終わった後もずっと脳内で再生され続けます。

高機能自閉症などの影響で相手の心が読み取りづらかった米津さんの苦悩がうっすら垣間見えるようなそんな一面もありますので、米津さんの過去の病気なども知った上で聞いてみるとより深くこの曲の本質に触れることができるかもしれません。

(心臓放映の歌詞解釈記事はこちらです。)

 

14.「人間とは、街とは、何だったのか?」を掘り下げる『抄本』

「人は愛し愛されたい存在である」という彼の根本的な人間像を明確に打ち出し、それを1曲目の『街』に重ねながら、そんな人間で構成されているのが街であるという非常に考えさせられる哲学的な歌がこの抄本です。

サウンドも『街』とほぼ同じで、最初のイントロのギターリフが耳に残るような何とも不思議さを纏いつつ、全ての楽曲の物語からリスナーを現実に戻ってこさせるような最後の曲としてふさわしい楽曲に仕上がっています。

(抄本の歌詞解釈記事はこちらです。)

まとめ

dioramaの全曲を紹介してみましたがいかがだったでしょうか?

このアルバムは全曲で一貫して「周りと自分が違っていてもいいけれど、そんな自分でも愛されていたい」という自己表現と孤独感の矛盾を両方とも内包している非常に米津玄師らしい哲学的なロックアルバムだったなと改めて感じました。

6周年記念にかこつけてやってみましたが、1曲を簡単に要約して魅力を伝えるのはCDポップを作っているみたいで楽しいので、他のアルバムもまたやってみようかなと思います!

 

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diorama [ 米津玄師 ]